せかいでいちばんすきなうた
2012年の夏。何となしに見ていたザ少年倶楽部で、わたしはある日ハッとさせられた。
「歌うま……」
あの日のことは一生忘れないと思う。曲こそ知らなかったけれど、柔らかく響く歌声と独特の発音が耳に残って離れなかった。KATーTUNのLe Ciel。歌い出しの彼がとんでもないスターであることは一目瞭然だった。
彼の歌声の成長をあの日から一瞬も逃すことなく追い続けることはできなかったけれど、何かの縁か、数年前から彼のファンとしてコンサートに足を運ぶまでになったのは不思議である。
あの日よりも格段に美しく優しく柔らかくなった歌声は、人々を魅了するのに値する素晴らしいものとなった。グループのメインボーカルとして、センターとして、確実に存在が大きくなった彼のことが誇らしかった。歌声が人々に認められるのが嬉しかった。
デビューが決まった。
彼の歌声が、ようやく世間に届く。彼の歌声はどれほどの人を感動させるのだろう。ワクワクすると同時に、不安もあった。感情のままに型に囚われず歌う彼へ、ボイトレしろ、声量が、などと言う人がいるということを私は知っていた。
違うよ、あのままの自由で柔らかな歌が素敵なんだよ。
デビュー曲初披露。
彼のソロパートはAメロ冒頭のみ。それでも美しさはハッキリとわかる。でも、もっと歌声を聞いてもらいたかった。
1/4。デビューツアー初日。初めてのデビュー曲フルサイズ披露。
大サビ前に感情を昂らせるように盛り上がるパート。そして泣き崩れて上手く歌えなくなったラスサビ。曲の始まりから終わりまでぐちゃぐちゃに涙で頬を濡らす彼が綺麗で、私まで涙が出た。
1/7。ジュニアとして最後の公演。
私は不思議と涙は出なかった。噛み締めるように最後まで歌って、観客に背を向けて涙を流す彼が愛おしかった。
年末年始にかけて有難いことにたくさんの音楽番組に出してもらえたが、尺はTVサイズで初披露時と同様、ソロパートはAメロのみだった。1/4の横アリで披露されたフルサイズでのラスサビ前のソロパートを早くどこかで見てもらいたい、聴いてもらいたい、そして彼の思いを感じとってほしい。
ファンのエゴでしかないが、図々しくもそんなことを考えていた。
RIDE ON TIME 最後の放送。彼が音楽を愛する原点に立ち返ることが放送前に分かった。
彼は、話すのが特段上手いわけではない。(知能的な意味で)頭がいいとは言えないし、難しい単語の理解ができないときもある。間違った使い方をする時もある。それが誤解を招くことが多々あった。
けれど、それを補う手段として彼には歌があった。「日本語が上手じゃないので…」と話す彼にとって、歌は共通言語であり、音楽は裏切らないものだ、と。
ファンですら見えない彼の感情を読み取る手段である歌(音楽)の原点ってどんなものだろう、と思った。
中学時代の音楽の先生と歌う合唱曲。
ピアノの伴奏に合わせて楽譜を見ながら歌う彼の声に答えの全てが詰まっていた。
優しくて暖かくて、大きくて包み込むような歌声。歌詞を噛み締めながら紡いでいく姿に、今までで1番泣かされた。私の大好きな歌声だ。広くて深い海みたいな、柔らかな景色が脳裏を過るような歌声。
正直、私にとってその曲は何の思い入れもないどこかで歌われている合唱曲にすぎない。それでも、彼の歌声の魔法によって唯一無二の救いの歌みたいなものに変化した。
彼の歌声は人の感情を大きく揺さぶるものであることを強く実感した。ただ、それだけでいいんだ。
わたしの世界で1番好きな歌。
ジェシーくんの柔らかく感情豊かな歌声でこれからも紡がれますように。
そして、ちょっとだけ。やっぱりファンのエゴでしかないけど。
ジェシーくんの素晴らしい歌声がたくさんの人に届いて、少しでも多くの人が幸せを感じてくれますように。
ジェシーくん。
デビューおめでとう。
SixTONES - Imitation Rain (Music Video) [YouTube Ver.]
2020年1月21日 木曜日